
平成28年1月より開始したマイナンバー制度ですが、皆様の事業所では既にご対応はお済でしょうか。
最近、マイナンバー制度の開始や法人番号が通知されたことに関連して、新聞やテレビなどにおいて、厚生年金の未加入問題が取り上げられるようになり、当事務所でも、社会保険の未加入事業者より新規適用の手続きに関する相談や業務依頼が増加しつつあります。
未加入事業者への加入促進の実態
厚生労働省の試算では、厚生年金の未加入の疑いがある事業者は全国で約79万事業所に上り、200万人程度の人が厚生年金に加入していない状況であるとの結果が報告されており、公平・公正な社会の実現には程遠い状況のように思います。
こうした現状のなか、日本年金機構では、この未加入事業者に対して調査票を送付することにより、社会保険制度への理解を深めるとともに加入促進を行い、場合によっては職員の訪問による加入指導を行うだけでなく、悪質な加入逃れをしているケースには立入検査を実施し、強制加入させる方針ということのようです。
また、建設業界においても、平成29年度よりすべての建設業許可業者へ社会保険の加入を義務付けるなど、法令遵守を徹底することで、不適格業者を排除し、建設労働者の公的保障を確保するとともに、公平・公正な社会の実現を図っていく取り組みを行っているようです。
今後は、法人番号やマイナンバーの活用が活発になり、税や社会保障の分野のシステムが連動することになれば、このような社会保険の加入逃れができない仕組みになるのではと思いますので、今後の動向に注視していきたいと思っております。
社会保険の加入義務のある事業所とは?
改めて、社会保険の加入について、法律上のご説明を致します。
社会保険の強制加入義務
社会保険については、以下のとおり強制加入が義務付けられています。
- すべての法人事業所(被保険者1人以上)
- 個人事業所(常時従業員5人以上雇用)
※農林、水産、法務、宗教など一部例外あり
社会保険の被保険者
加入義務のある事業所において、名称の如何を問わず、常時使用される人について、すべて被保険者となります。
- 法人の代表者、役員
- 正社員、試用期間中の人、外国人
- パート、アルバイトなど
※国籍、年齢、身分、報酬額などを問いません。(厚生年金は原則70に達するまでの加入)
特に注意して頂きたいのは、パートタイマー等についてです。社内的にパート、アルバイトという名称であったとしても、一般の正社員と同様に勤務している場合はもちろんですが、一般の正社員の労働日数、労働時間等を基準に、それぞれがおおむね4分の3以上である場合、就労形態等を考慮し、総合的に判断して被保険者となります。
最近の年金機構の定期調査において、保険料の適正徴収やパート、アルバイト等に対する加入指導は重点的に行われておりますので、各事業所において契約関係の見直しや労働時間の適正運用を心掛けるなどの対応が必要です。
パートタイマー等の社会保険加入拡大
平成28年10月よりパート、アルバイト等に対する加入要件が下記のとおり緩和される予定となっており、約25万人の人が加入対象になるという国の試算が公表されています。
- 週の労働時間が20時間以上(雇用保険と同水準)
- 賃金月額が月88,000円(年106万円以上)
- 1年以上の使用が見込まれる
- 従業員501人以上の勤務先
- 学生は適用除外
当面は、従業員数501人以上といった大企業が対象となっておりますが、将来的には中小企業にも広がる可能性が高いため、対応が必要となるのではないでしょうか。
おわりに
今後、マイナンバーの運用次第では、さらに未加入事業者や未加入者に対する加入促進、立入検査など対応を求められる事業者が増加するのではないかと考えられ、当事務所でも、事業所に対してできる限り自主的に手続きを進めていくことをご指導させて頂いております。