
昨年、メジャーリーガーの黒田博樹の男気による電撃復帰や新井貴浩の涙のFAからの復帰などカープ人気は社会現象となりました。今年も、黒田の200勝、新井の2000本安打などの記録の達成と25年ぶりのリーグ優勝が楽しみです。
そんな中、昨年、3月にいち早くカープ人気に便乗したのが、広島労働局でした。
なんと、「カープの試合が地元である日はノー残業デーに」と広島労働局が提案し、ユニフォーム姿で記者会見まで行い、働き方の見直しを呼びかけたニュースがありました。
国が進める「働き方改革」の一環ということで、その他にも家族の誕生日の有給休暇取得や朝型勤務など複数の取り組み案などの例示を示して、企業に要請するという内容でした。
広島労働局が提案した背景には、企業の時間外労働に対する法令遵守をアピールする意味もあったと思います。
時間外労働に対する法令遵守
近年、残業代の未払いや時間外協定の限度時間を超える違法な時間外労働が社会問題となっており、従業員に過酷な労働を強いる「ブラック企業」対策として、労働局内に設置された過重労働撲滅特別対策班(かとく)の摘発により、従業員に違法な残業をさせたとして、大手ディスカウントストアや靴販売大手会社などが相次いで労働基準法違反で書類送検されるというニュースがありました。
労働基準法36条(36協定)
そもそも、労働基準法では、労働時間は原則1日8時間、1週40時間までと定められています。この法定労働時間を超えて労働をさせた場合が、労働基準法の(法定)時間外労働です。これが割増賃金の対象になります。
また、法定休日は、1週間に1回あるいは4週間を通じて4日以上付与すること定められています。この法定休日に労働をさせた場合が、労働基準法の(法定)休日労働です。これが割増賃金の対象になります。
そこで、時間外労働や休日労働をさせる場合には、書面により労使協定を締結し、事業場を管轄する労働基準監督署へ届け出なければなりません。
ただし、この時間外労働や休日労働をさせる場合は、あくまで限定的なものであり、協定において、時間外労働させる具体的な理由(納期のひっ迫や工程の大幅な変更等)や限度時間などを定めなければなりません。
前述した書類送検の事案は、いずれも協定を届け出ていたものの、協定した時間外労働の限度を超えて時間外労働させていたというだけでなく、月100時間以上、最大400時間以上も違法に時間外労働させていたというものでした。
この書類送検は大きなニュースとして取り上げられましたが、当事務所においても、初めてご依頼頂くお客様の中には、そもそも時間外労働に関する協定書(36協定)を知らなかった経営者の方も多くいらっしゃいましたので、さらに周知徹底を図る必要があると考えております。
まとめ
前述した、広島労働局の提案は、カープ人気で施策の浸透を図ろうというアイデアを職員が思いついたそうですが、広島県民が誇るカープの影響力は、国の働き方をも変える力があるんだなぁと若干関心しました。
国の施策を実効するのは、特に中小企業においてはハードルの高いものもありますが、従業員が働きやすい、やりがいのある職場環境を構築することは、今後の企業経営において、急務の課題であり、よい人材を確保し、育成するために必要不可欠であると考えております。